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2020.5.29 / おままごとセット

今年で20歳になる長女が産まれた時に作ったおままごとセット。
まだ給料もろくに稼げない職人修行一年目の事だったが、あの時長女が産まれてきてくれたおかげで、たかが自分の事で一喜一憂する陳腐さと、人に対して責任が持てる事の有り難みを知れたように思う。
ちゃんと修行する覚悟が決まったというか、仕事を通じて仲間や家族、もっと言えば社会の役に立ちたいと思えるようになったというか、自分の中で確かに何かが変わって少しづつマシなものが作れるようになりながら今に繋がっているように思う。
それから長男、次女、まだ4歳になる次男と20年に渡って4人の子供が使い続けている。
お皿などいくつかは無くなってしまったようだが、まあ何はともあれ今でも我が家で活躍しているいのが嬉しい。

2020.2.29 / 鉋の練習

この1ヶ月半、毎日深夜まで時間を忘れるほど夢中になって鉋の練習をしている。
 
きっかけは大工の渡辺さんとの出会いだ。
毎年行われる鉋の全国大会でも決勝常連のスペシャリストの彼は俺と同じ歳の42歳。
彼が見せてくれた0.003ミリという薄さのカンナ屑はただの屑ではなく、突き詰められた美そのものだった。
 
「俺に鉋を教えて下さい!」
 
その日から東京と新潟で離れているがメールという文明の利器のお世話になって、ほとんど毎日、時には深夜まで俺の質問に彼が図解や動画を交えて本当に丁寧に教えてくれる日々が始まった。
砥石は何を?研ぎの順番は?刃の角度は?台の直し方は?などなど基礎からの質問に対して、彼は努力と年月を懸けて修得したノウハウを惜しむことなく伝えてくれる。
その教えを全てメモに整理して、一つ一つ実践していく毎日だ。
 
あまり簡単に感謝感謝と言うのも好きでないが、こればかりは「感謝」以外の言葉が見つからない。
 
「鉋の薄削り」という技術は大工さんが柱などを仕上げる時に使う技で家具づくりにおいて使うことはない。
しかし鉋という道具を究極まで突き詰める事で可能になる「薄削り」を身につけることは、自分の家具作りの底上げになるだろう。
そして何よりやってて楽しい!
 
こんな機会を与えてくれた彼に思いっきり腕を振るった椅子を作ってお返ししようと思っている。
 
3月には新潟の渡辺さんの工房におじゃまして直接指導してもらう予定だ。
再会できることが楽しみで仕方がない。


2018.9.8 / 平野楓汰の誕生会

上海家具見本市に出展させてもらった

信じられないくらい沢山の人が会いにきてくれた。

それもこれも今回のことを全てまとめて実現してくれた黄(コウ)さんのおかげだ。
個々までの敬意は以前も書いたので省略する。
黄さん自身も腕利きの家具職人だ。

一般的にはあまり馴染みは無いだろうが「技能五輪」というものがある。
大工だったり、左官だったり各ジャンルの職人が技能で競い合うオリンピックだ。

黄さんは台湾チャンピオンで国を代表する選手だった。

商品代金も輸送費も全てもってくれてブース代などの出品ひも無し

少し前になるけど平野フウちゃん19歳の誕生会をした。
KOMAに来て2年目になる。

誰よりも気が利いてフットワークも軽い。

飲食店などでは一度行けば覚えてもらえて、2回目からは常連客のようなサービスを受けてしまうような愛されキャラだ。

誰とでもすぐに打ち解けてしまうのは、明るい人柄と何事にも臆さない強さがあるからだろう。
そんな彼だからKOMAの良いムードメーカーになってくれている。

そして武内マイちゃんのはじめての部下でもある。
そんなに厳しく怒って大丈夫?と傍目にも心配になる事もあるが、その二人の関わりに口出しする気はない。

マイちゃんには愛情があるし、受け手のフウちゃんには素直さと根性があって、どちらのことも信頼している。

「臆さないチャレンジ精神がありそうだ」が大卒や経験者などの就職希望者から高卒で最年少の彼を選んだ理由でもある。

その上司と部下の二人の関係から夜の練習会なんていうのも始まった。

フウちゃんが次にチャレンジしたり覚えたい事を週に一度マイちゃんが教えながら練習するという内容で、当然本人はその一週間自主練習をして臨むのだが上司であるマイちゃんから見るとアマく感じることもあるようで「お前ガンバルって言ったよな?真面目にやれよ!」なんて叱責する声を遠くに聞きながら、2人の真剣な横顔をチラリと盗み見ていると自然と口元が緩んでしまう。

こういった事が若い衆のなかで自発的に行われるのがすごく嬉しいからだ。

せっかくの仕事を日々のルーティーンにしてしまうのはもったいない。
どうせなら新しいチャレンジの結果そのものを仕事にしたい。

どちらが楽かと言えばルーティーン的な繰り返しかもしれないが、
どちらが楽しいかといえばチャレンジの繰り返しだと思う。

その場合、大切になるのは失敗をポジティブに捉えること。

はじめての事なんて上手くいかなくて当たり前だから「失敗できてラッキー」くらいに思えないと、とてもじゃないけど続けていけない。

その度に気付きを得て次に繋げる繰り返しの春秋を経ていけばいいだけで、「失敗を楽しむ事」がチャレンジの本質であるように思う。

まあ、実はそんなふうに思えるようになったのは自分自身もつい最近の事で、それまでは「失敗は無駄そのもの」と思っていたが、歳も一番下で職場の仲間達はみんな大学や専門学校を出ていて高卒は自分だけ。。などなど上手く出来ない事の言い訳なんていくらでもできるだろうが、下手でもなんでも四の五の言わずにまずヤッてみる!というスタイルの彼を見ていてそう気が付けたのかもしれない。

乾いたスポンジのような吸収力は、スポーツでもなんでも同じだろうが若さの特権というものかもしれない。
何かをはじめるのに年齢など関係ないなんて言うけど、早いに越したことはない。
特に身体的だったり感覚的な要素が多いことならなおさらだ。

フウちゃんはまだ19歳。

大学卒で入ってくる子の22歳のころにはもう5年目になっている。

歳は同じでも給料は倍くらい稼いでる可能性だってある。
それが完全実力主義の職人の世界の面白いところの一つだ。

そして、俺の部下の武内マイちゃんの部下である彼にもいつか部下ができる。

なんだか想像するだけで楽しみで仕方がない。

いきなり話は変わるけど
明日から亀井と武内マイちゃんと一緒に上海に行く。

世界でも有数の規模を誇る上海の家具見本市に出展させてもらえることになって、現地で家具の展示と刃物を使った仕上げ作業の実演などをする。

とんでもなく大きな会場の中でも、特に良い場所に立派なブースを構えてもらえるようで、招待して下さった方々には本当に感謝しています。

新たな挑戦にワクワクしている反面ビビってもいるけど、良い結果を残すことが一番の恩返しだと思うので最善を尽くしてきます。

世の中を変える!とか、業界の未来を!とか、俺の周りには立派な「大義」を抱いて本気で尽力している人が沢山いて、いつも刺激をもらえるし尊敬もしている。

だから俺も!なんて思ってはみるが、正直なところ全くピンとこない。
「世の中」とか「業界」とかの大きなスケールが実感できないし本当は興味が無い。

もちろん結果的に貢献できれば嬉しいが、それが目的にはならない。

俺みたいな小者が持つ「大義」など自分の卑しい欲を勘違いした大義名分がイイとこで、そんなもの持つ必要がないと40歳を越えて最近ようやく気が付いた。

それでも「小儀」はある。

お客さんや仲間達がしてくれる信頼や期待だけは裏切りたくないし、出来ればそれを超える結果で応えたい。

もう20年近くも前になるが現在のフウちゃんと同じような小僧の頃から、今までの全部の仕事でそう思ってきたし、これからもそれだけは変わらない。

だから今回の上海も全力でブチかます!!

つもりでがんばります〜


2018.6.8 / 平塚剛史の誕生会

平塚タケちゃん32歳の誕生会をした。

KOMAに来て4年目になる。

嘘や悪口、言い訳や責任転嫁などのみっともない類いの事を一切せず、責任感も意地も根性もあって、建築士免許なども持っていてモノづくりに対するスキルも知識も情熱もある。
社会人としての経験も豊富で変に甘えてくる事もなく無駄な愚痴も言わないが、きちんと意見は言う。

そのくせ、どこか掴みどころの無い自由人であり、ほど良くドジでもある。

まあ何れにせよ、いつもニコニコ穏やかな男らしさがあって、出会えて良かったと思える最も信頼が持てる仲間の一人だ。



彼が入社した当時はまだまだ厳しい仕事環境で、受け身の仕事が多く常に納期に追われていて、休みは月に4日程度で少なくとも1日15時間は働いていた。

疲弊した若い衆が次々に辞めてしまったタイミングでもあり、新しいチャレンジどころか優先すべきは「立て直し」という状況で、自分自身もイライラしていることが多かったように思う。

それが少しずつ改善されて、今では1日8時間で月に10日の休み。
みんなでクリエイションに時間を使えるようになった。

それぞれの良いところが活かせて、作りたい物やヤリたい事そのものが仕事になる体質に少しずつ変わってきている。


平塚タケちゃんはキツい時期を共に乗り越えてくれて、今の環境づくりの立役者の一人でもある。


「失敗は成功の素」なんて昔からよく聞くけど、本当にその通りで失敗も無しに楽して上手くいくほど世の中アマくないってことは独立して15年で嫌というほど学んだが、まあ逆に考えれば、小さな失敗をなるべく沢山スピーディーに積み上げれば、そのまま小さな成功の積み上げになる。

そして、その小さな失敗に掛けられる時間と労力とお金のサイズが大きくなっていく事そのものが成長だ。


そうすると失敗することも楽しみの一つになってくる。


なんて楽観的に考えられるのも信頼出来る仲間のお陰である。


今後は、彼の知識や探究心を活かして新しい商品開発を一緒にやっていきたい。
たくさん失敗しながら共に成長していけたらと思っている。

2018.5.20 / 椅子のフィッティング

椅子のフィッティングをしに岡山県から工房までお客さんが来てくれた。

KOMAの椅子との出会いは、パンのスイーツ専門店「カフェルセット鎌倉」だったと話してくれた。

鎌倉旅行に来ていたその日は雨で、たまたま入ったカフェの古民家を改装した店内も心地良く、そこでのんびり1日を過ごす事に。

「そう言えば1日座ってるけどこの椅子ぜんぜん疲れないぞ?!」でKOMAに興味を持っていただいた。

ただKOMAは「常に進化しながら今の一番を創りたい」という理由から、ある一部の定番品を除いてほとんどが数量限定品だ。
そしてお客さんがカフェで座った椅子も例に漏れず既に廃盤品となっていて、後継モデルで対応する事になった。

が、それがお客さんの体格に合わなかった。

「あの時のカフェで感動してようやく手に入れたKOMAの椅子だからこそ、一生の相棒として完璧に納得のいくモノにしたい。」と問い合わせをいただいた。

そんなふうに思ってもらえて凄く嬉しかった。

東京郊外の工房まで御足労いただく事になってしまうが、もしそれが可能なら徹底的に追求したい。
そして冬の寒い工房で数時間お付き合いしていただけるなら向き合って一緒に「完璧」を仕上げたい。


そうしてお客さんが工房まで来てくれた。


物をつくっていて「完璧」を得る事はない。
いつも目指しているが手が届かないものであり、近づくほど遠くに感じるものだ。

特に椅子という道具はあらゆる物の中で最も人の体との関わりが多い道具である。
触れる面積はもちろん、全体重を支えながら人の動きにも耐え、もちろん個人の対格差によって座り心地は大きく異なる。

そして人の体は複雑な3次曲面で構成されていて、それがグニャグニャと曲がりながら形を変える。

「座り心地の良い椅子」の定義は長く座っていても疲れないという事だ。

例えば5時間椅子に座っているとして、ずっと同じ体勢でいる人はまずいない。

スッと背筋を伸ばしたり、ダラリと体勢をくずしたり、肘にもたれかかったり椅子という空間の中で人は様々な体勢をとる。

そのどれもが心地よいというのが座り心地の良い椅子ということになる。

高さ、角度、奥行き、カーブなどなど様々な要素が複雑に合致してはじめて叶うものだ。

だからこそ機械加工ではなく人の手作業の必要性があり、椅子づくりには終わりのない難しさと楽しさがあるのだ。



作り手が勝手に感じる「完璧」なんてのは何の意味もないように思うが、
ただ、そのお客様一人にとっての「完璧」は作る事が出来るかもしれない。

今回は作り手としてそんな「ただ一つの完璧」に近づける嬉しい機会だった。



お客さんを目の前に、鉋で削っては座ってもらうの繰り返し。

高さ、彫り込み、角度の調整。
鉋の一掛けで刻々と座り心地は変化していく。

「どうでしょう?」
「う〜ん膝の裏が少し当たるかな〜」

削る、切る、座る。
共同作業で少しずつ理想に近づいていく。

「コッチは良くなったけど今度は太腿の裏が少し圧迫されるかな。。」

お客さんが求めているカタチが少しずつ伝わってくる。

前後の脚の長さの違いで全体の角度も変わる。

前脚を2,5㎜カットしてみる。

角度によって背中の当たりにも影響する。

次は後脚を5㎜カット。

ひざ、もも、おしり。
座面の前から後ろへのラインの流れが見えてくる。

またもう少し脚をカット。


少しずつ少しずつ。



そろそろ3時間が経とうとするころ。


「どうでしょうか?」

目を閉じてじっくり確かめるように座る。

暫しの沈黙。

ゆっくり目を開けながらニッコリ笑って

「完璧!!」


ヨシ!!キター!!

思わず握手!!


一脚の椅子を間に置いて、一人のお客様と向き合う事で多くを感じる時間だった。

「喜んでもらえるものをつくる」
それを叶える為に技術を追求し経験を重ねていくことが職人の仕事である。

すごくシンプルな事にあらためて気づかせてもらえて本当にありがとうございました!!




1月の最終週は岩手県の夏油までスノーボード社員旅行に行ってきた。

たくさん遊んで飲んで食って笑って楽しい思い出がまた一つ。

何かの縁で集まれた仲間達と色んな思い出を共有することも仕事をする一つの意味だと思う。


カフェルセットさんHP


2018.3.7 / 武内マイちゃん誕生会

武内マイちゃん25歳の誕生日会をした。
何をやってもちゃきちゃき手際がよくて、せっかちな俺にとっては本当に助かる存在で椅子部門の一番弟子だ。

買い出し、掃除、軽作業の雑用係としてKOMAに入ってきたのは5年前になる。
当時はぬるいアマちゃん小娘で何の期待もしていなかったから、会話どころか目を合あすこともなかった。

1年半を過ぎた頃からか少しずつ頭角を現してきたのは、刃物を使った椅子の仕上げ部門。
陰での努力もあったろうが、とにかく刃物を使う感覚が良かった。

これは、いくら練習しても人によっては一生できない内容でもあるように思う。
技術的にももちろんだが削り出した最終的な形状の正解は、俺の頭と手の中にだけ存在していて、それを理解するのがまず難しいからだ。

だからアシスタントを育てることそのものが難しい分野で、俺だけでは生産力に限界がありプロパーの定番商品づくりには手が出せずにいた中、それが出来るようになったのも彼女の成長の力が大きい。

手作業ならではの座り心地などの機能にこだわりながら、定番として数を作りコストを抑えて市場に出せる。
現在のKOMAのスタイルである「一点物作品のクオリティーを製品に落とし込む」を実現する切っ掛けのキーマンは彼女であると言っていい。


今では、職人としての製作以外にも製品の在庫、納期、若衆の技術指導から出勤や給与、俺のスケジュールなど様々を管理するマネージャー的な役割までこなしてくれる。


3〜4年前、若い衆が次々に辞めてしまう時期にも彼女だけは残ってくれて今のKOMAをつくる一つの原動力になってくれた。


とにかく求められたら、どんなことでも弱音を吐かず全力で取り組んでくれる意地と根性の塊みたいな人である。

今では会社の方向性を決める会議にも参加して、共有した意志を若い衆に伝えて引っ張る役割もこなそうとしてくれている。

そうやってヤルことヤッてスジを通して、会社に対してもきちんと意見もする。

それでも俺の直下だからキツい言葉で一番怒られるのも彼女の役割だ。


おそらく全ての経営者が「こんな子がいてくれたら会社が良くなるだろうな〜」と理想に想うであろう「こんな子」だ。


上手くいったら儲けもんだし、下手こいても元に戻ればいいだけで失うモノなんて何もない。
年齢も性別も経験年数も関係ない。
ガンガン新しい事にチャレンジしてドンドン成長しよう!ってのがKOMAのスタイルで、それを理解して体現しようと先頭に立って努めてくれているのが彼女である。

一人一人のオリジナリティーが輝く会社にしたいと願っている俺にとって彼女は、まさに
そんな理想を現実にしてくれる第一歩であり超嬉しい存在だ。

経験年数はまだ5年の25歳。
力も必要な職人としては大きなビハインドを持つ女性だ。

そんな彼女が「だから?なんでアタシにできて、あんたら男にできないの?」なんて態度で黙々と仕事をする後ろ姿に、いつも心の中で喝采をおくっている。




そんな彼女が

TV番組「にじいろジーン」に出演します!!


関西テレビ(フジテレビ系列)8チャンネル
3月10日(土)8:30〜9:55
の9:20頃からミラクルチェンジのコーナーです。


長々と番組の宣伝でした〜笑

乞うご期待です!!

2018.2.26 / 15周年の初詣

皆でお揃いの法被を着て毎年恒例の初詣に行ってきた。

大きな鳥居をくぐり参道に入ると細かい砂利に脚が取られて物憂いだが、目を閉じてザクッザクッという音と歩いていると雪や砂浜とはまた違う何か自然の上を踏みしめているような錯覚を覚える。

砂利の大きさや量の程良い加減を計算して人工的に感覚までもを創造するのはいかにも日本的なモノづくりの発想で心地が良い。

社殿に上がり横一列に並んで正座をして1年の安全と商売繁盛を願い祈祷してもらう。
やるだけやったら後は神頼みという単なる験担ぎだが、神主さんが唱える祝詞と幣を振るうサッサッという音が頭の上を行ったり来たりするうちに不慣れな正座に脚が限界を迎えて頭までシビレてくると「ああ今年も始まったなあ」と実感する。

参道にはずらりと屋台が並び参拝客で賑わっているが、ピンと張った糸のような緊張感はいつもと同じで背筋が伸びる。

熱いワンカップ酒と焼きそば、たこ焼き、モツ煮、お好み焼き、焼き鳥などなど屋台の端から端まで全部ちょうだいってな具合で、寒い中ガタガタ震えながら泥酔するのが毎年の恒例行事だ。

数えてみると、そう言えば今年はお陰様でKOMA創業15周年だ。
勢い勇んで全くのノープランで独立した割によく続いたなあと思う。

独立して最初の頃の仕事は「クオリティーなんてこだわらなくてイイから安く早くして!」なんて言われるようなものばかりで何だか悔しくて、良いモノづくりの環境を与えてもらっていた修業時代を思い出しては、売れる当てもない作品づくりを意地になって続けていた。

そうやって続けるだけで精一杯の8年間を過ごし、ようやく自社製品づくりのチャレンジを少しずつ始められるようになったのは今から7年前。
そのタイミングでいきなり与えてもらった伊勢丹新宿店のメインステージ45平米は大きなチャンスとなった。

2013年に10坪の小さな直営店KOMAshopを開店し、念願だった自社製品を展開し始めたのはまだたった5年前。

こうして見ると、あらためて自分たちはまだまだ新参者だと認識します。

それこそ青山辺りには老舗のインテリやショップが多くあって学生の頃はしょっちゅう憧れの目で覗き回っていた。
実は相棒の亀井が職人志望で面接を受けて不採用になった家具屋さんもあったりする。

長く続いているショップはそれぞれのオリジナリティーがあって、いちファンとしての気持ちは今でも自分の中に変わらず存在しています。

今は自分たちのショップにあの頃の俺たちみたいな学生さんや若い家具職人さんが全国から見学に来てくれることがすごく嬉しいしガッカリされないように頑張ろうという気になります。



この日は工房に帰ってまた呑みなおす。

みんなで書き初めをして1年の抱負を額に入れて事務所に飾る。
酔った勢いで気持ちがデカくなって背伸びをして書くから面白い。
これは今年から新しくはじめた行事だ。

この日は例のKOMA1-GPの第2回を行った。
テーマは「ゴミ箱」で、また俺が優勝して賞金1万円を獲得したが「経費つかい過ぎです!」の武内マイちゃんの一言で財布に入る前に没収された。

さあ今年は何が起るのか。
去年が遠く霞んでしまうくらい先に進んで、10年後に旨い酒が呑めるような楽しい思い出を皆で沢山つくれたらイイな〜と思っています!



2018.2.15 / アルバイト

中国出身で慶応大学に在学中の語学堪能な女の子が面接に来てくれた。
元は北京の大学を出て銀行のフィナンシャルプランナーなんて事をしていたらしい。
KOMAにとっては異色の経歴で興味が湧いた。

いつも面接は午前中からスタートして簡単に挨拶をしたらそのまま工房で作業を体験してもらう。
武内マイちゃんがサッと用意してくれる「同じ釜の飯」の昼食をみんなで共にして、また午後から作業をしてもらい、安いが日当も支払う。

次の段階は、来れる範囲の週1ペースでバイトに来てもらうか3ヶ月のトライアルをしてもらう。

こちらが見たいのではなくてこちらを見てもらいたい。
自分に合うか、続けられそうかを見て体感して判断してもらいたい。
多くの時間を費やすことになる仕事と職場をしっかり選んでもらいたい。

今までも沢山の人が入ってきて離れていった。
本当にハードな時期にいてくれた一人一人に感謝しているし、勝手ながら惜しいことをしたなぁと思う人が何人もいる。

何れにせよ大抵の場合は会社と俺に落ち度があり、その度に後悔して少しずつだが働く環境は改善されてきた。

会社の成長は人の成長とイコールだと分かっているが、モチベーションを持ってイキイキ成長できる環境とは何か?
それが簡単に実現できたら苦労しない。

今までもその時なりに一生懸命やってきたつもりだが、振返ってみるとやはり良くないことばかりだったとあらためて反省する。


そしてこの冬から現メンバーの努力の甲斐もあって、若い衆の働き方を根本的に変えられるような新しいチャレンジが始まった。

1日8時間で20日勤務が月の基本で残業はあっても2時間まで。
月間160時間〜最大でも200時間未満といったところだ。
毎月10日の休みがあってだいぶ時間にゆとりが出来る。

その時間の使い方は自由だが、
もし作品を作ったら会社が買い取って本人の紹介プロフィールと共にshopで展示販売する制度や、日常の業務中では時間の縛りがあって丁寧に教えたりチャレンジできない内容の作業を時間外業務として一緒にやる制度などもできた。

「もっと上手くなりたい」とか「もっと稼ぎたい」理由は何でも良いが、やりたい人はいくらでもチャレンジできる。

ヤル気に溢れるウチの若い衆達の場合、会社が下手に縛るより本人達の自由にした方が伸びるだろう!との想いもある。
少なくともモノづくりが好きで意欲的に前進したい者にとってはチャンスもあって良い環境だと思う。



きっと職人という職業の未来も他と同様に明るくないと思う。

近い将来ほとんどの人の手技は機械に勝てなくなるだろし、
効率の良い優れた設計やデザインも人工知能が人の経験に勝るのだろう。
グローバルな技術の進歩なんて俺のオツムじゃもう予想もできない。

だけど「オリジナリティーがあれば何の問題もない」と楽観的に見ている。
職人にとってのそれは、作って造って創りまくったその先に見えてくるものだと信じている。
そりゃあ人の何倍かはやらなきゃダメだろうけど、ただそれだけのことだと思う。


時代の波は個人の想いなど微塵も関係なく勝手にカタチを変えながら進んでいく。
その途方もなく大きなウネリに抗い変化を拒んだ途端、一瞬で飲み込まれモミクチャにされて、気付いた時には上も下も前も後ろも何かも見失なって取り残されてしまうような気がする。
この時代は予想できないくらいスピードもサイズもあって難しそうだけどその分「乗れたら最高にキモチ良さそうだ!」とこれもまたサーフィン気分で楽しめれば良いくらいに楽観視している。


変わりたくないからこそ変わらなければならない。


俺たちで言えば「良い家具を創りたい」という初心を変わらずに持ち続けるためにチャレンジして世の中の変化と共に変わり続けなければならない。

普遍的なモノはその春秋を経た先に表現出来るのだと思う。


KOMAは恐れることなく皆でガンガン挑戦しながら変化を楽しんで、一人一人がオリジナリティーのある職人の集団でありたいと思っています。

そんな職人達それぞれの個性が光る作品のファンになってくれる人が次第に増えていって、一人一人が主役で輝けるような「ロックバンドみたいな会社」を目指すのも修業時代に憧れた自分勝手な初心の一つです。

全ての人に受け入れられるモノなんて作れないし、誰にとっても居心地が良い会社なんかもつくれません。

限られているからこそ、響いてくれるお客様や仲間達の有り難みを感じます。



現在週一でアルバイトに来てくれているのは、プロダクトデザインをしっかり勉強した女の子と韓国出身のイケメン専門学生。
二人とも魅力的でよく頑張ってくれる。

今回の中国から来た女の子は家庭の急な事情で国に帰らなくてはならなくなってしまった。
映画を見てるだけで言語が覚えられるというから相等アタマが良いんだろう。
陽気でハツラツとしたすごく可愛らしい子だった。

帰り際にKOMAのパーカーをあげたら飛び跳ねて喜んでくれた。
「中国に帰ったらコレ着てKOMAの宣伝する!」
「中国に来る時は力になるから声かけて!」
「また日本に帰って来れたら働かせて!」

たった数時間の付き合いだったけど、いつか何かで関わるんじゃないかと直感する良い出会いだった。

俺は頭も顔も性格も良くないがテキトーな直感力だけは自信がある。

2018.1.20 / 上海出張

日本の家具ブランドとして上海で展開してほしいとのオファーをいただいて、商談というよりはお互いの信頼関係の確認をしに亀井と2人で中国に行ってきた。

結果は「トラブルがあったら悪いのは俺たちだ」と思えるような最高に素敵な人たちで、今秋に開催される上海デザインショーで出品させてもらえる事になりそうだ。

この話の始まりはインスタグラムに載せたこの写真が切っ掛けになる。

まずこれがインスタグラムジャパンに取り上げてもらってドカンと拡散された。

それで、「日本にかわいい家具職人がいる」と武内マイちゃんが中国のnetで話題になったらしい。
それを切っ掛けにKOMAを知った家具職人の夫婦が台湾から技術交流に来てくれた。

その夫婦と木工関係で知り合いだったのが今回のご縁に繋がったコウさんだ。


11月の初めだったろうかKOMAshopから工房に電話があった。

上海で木工教室を運営しているという2人が今ショップに来ていて、急だけどこれから工房を見学したいと言っている。

普段はお断りすることも多いが、ちょうど作業も一段落しているタイミングだったこともあって工房にコウさん達がやってきた。


日本の内装大手企業で10年努めていたコウさんは日本語が堪能でコミュニケーションには困らない。

日本の木工技術が大好きで鉋などの道具もコレクションしているそうで、家具の作り方、鉋や刀などの道具の使い方などひととおり説明してずいぶん熱心に聞いて体験してくれた。

数時間だがお互いに楽しく技術交流ができた。


すると

「実は今日来た目的は他にもあるんです」とコウさん。


「中国でKOMAブランドを展開しないか」とのことだ。

特に海外だとダマされるなんて聞くけど俺たちなんてダマすメリットもないだろう。
楽しそうだから二つ返事で快諾した。

無い知恵しぼって考えてみてもKOMAに失って困るものが見つからない。

たまたまの偶然とタイミングが重なっただけのただありがたい話で、それならとりあえず中国に行ってみよう!というわけだ。




赤く光る漢字のネオン看板が並ぶ夜の通りに立つと中華圏に来たのだと実感する。

ギラギラに装飾された観光フェリーに混ざって錆びた貨物船が行き交う運河の対岸に見えるレンガ造りの強堅で落ち着いた町並みは元はイギリス領地だったと教えてくれた。
細い通りを挟んだ左隣は全く雰囲気を変えて、洒落た時計台が印象的な元フランス領地が広がる。
そのずっと左側には近代的な高層ビル群が賑やかに並んでいる。

夜の冷たい霧雨も手伝ってかその古今東西が交わる美しさが異様に感じて少し恐くなった。


上海にはファッションも車もインテリアも世界のハイブランドが東京よりも大きな店を構えている。

家具やインテリアだけの大きなショッピングモールがいくつもあって家具屋の多さに驚いた。

人々のマナーが悪いなんて全く無い。
細かい事はお互いに気にせずおおらかであたたかい。


そう言えばコウさんが何者かということも詳しく知らずに上海に来ていたが、都市開発なども手掛ける台湾の財閥みたいな大きな会社の人だという事がわかった。

木工教室と言っても機械設備もしっかりしていてショップやカフェが併設された立派な施設だ。

インテリア専門の超デカいショッピングモールの最上階で中国の木工の歴史ミュージアムも手掛けていて「このモールはどこでも好きに使っていいよ〜」なんて言ってくれた。


なんでウチみたいな小さい会社に声かけてくれたの?と聞いたら、
「KOMAの家具は誰も真似できないから」と言ってくれた。
そうでないと中国ではあっさりパクられて商売にならないそうだ。



今、中国では国を挙げて職人の手技を大切する動が強まっていて中国全土から300人の様々なジャンルの工芸師が選抜されている。
それらを取材し紹介するメディアの役割もコウさんたちのプロジェクトの一つだ。


それにしてもその工芸師の方々の技術力はどれを見てもハンパじゃなく素晴らしい。

そしてエルメスなどのハイブランドがプロデュースして次々と新しいカタチになって展開され始めている。

透けるほどに薄い白磁のお皿。
指ではじいた音の反響で薄さを計りながら創られている。
「コーン」と響くその音色は楽器のように美しく店内のBGMとしても使われていたほどだ。

表情豊かで美しい翡翠(ひすい)の茶器。

1ミリにも満たない薄い竹で複雑に組み込まれた香炉。

家具も沢山あってそれはそれは素晴らしかった。

超ハイレベルな工芸の技と世界のハイブランドのセンスがガッチリ手を組んだこのレベルの商品を常設して扱っている店は東京では見たことがない。




世界のトップのしっぽの先がチラリと見えた気がした。

自分たちの未熟さが知れて腹の底から震え出すほど嬉しかった。

新しいチャレンジはいつも初心にかえらせてくれる。





まずは今秋の上海デザインショーへの出品を目指して準備開始だ。




とにかくコウさん達には何から何まで本当にお世話になった。
行きたいところは様々手配して何処へでも連れて行ってくれて上海の家具市場のピンからキリまで見せてくれた。
毎食のご飯は信じられないくらい豪華に振る舞ってくれて朝まで酒にも付き合ってくれた。

自分たちのやっている事、これからやりたい事を静かだけど熱をこめて一生懸命に話してくれた。

そうやって伏し目がちに訥々と話す彼らを見て、なんだか素敵だなぁと思った。



最終日にコウさんの木工教室の生徒さんを中心に行ったワークショップは皆さん興味津々で凄く喜んでもらえて嬉しかった。


次回は春にコウさん達が東京に来る予定だ。
心からのおもてなしができるように今からプランを考えておこうと思う。

2017.12.29 / KOMA-1グランプリ

社内デザインコンペなんていったら大げさだが簡易的にそれらしき事をやってみた。
定期的な月に一度の飲み会で乾杯から最初の1時間に行う余興だ。
ルールはA4の普通紙に1人1案の一発勝負。
プレゼン時間は1人3分。
優勝賞金1万円。
KOMA shopで使う備品や小物から新人でも参加できそうなお題を店長が決めて審査まで行う。
大喜利に近い感覚で盛り上がることが目的である。

今回は「傘立て」


shopの備品と言えどできれば「いくつか作って販売できる物にしたい」

ようするに値段をつけたいということだ。

プロと趣味との根本的な違いが生じる。

こうなると急にものづくりが難しくなる。




親方の役割としていろいろ迷ったが第一回はあえて「ムカつく勝ち方」ってのを見せる事にした。


世の中の「勝ちにくる人たち」ってどれくらいマジでぶっ潰しにくるか、今後のKOMA-1GPをもっと盛り上げる為に半分遊びだけど真剣勝負の基準になればとの思いからだ。


今回はみんなが出してくるアイデアを予想して片っ端から理屈でつめて消去法で排除する提案だ。
なんと言ってもテーマはムカつく勝ち方だ。




まず条件を考える。

傘立てだ。
屋外使用の可能性もあり、そもそも木は水との相性が悪い。
椅子などのように座り心地などの分かりやすい差別化が出来ない。

劣化の可能性が高く組んだり接いだりの加工はNG。
狂いやワレ、カビの可能性が高く板を使うのもNG。

せっかく手間を掛けて良いモノを作ってもすぐに劣化してしまいクレーム対象になる。
また、KOMAにとっては数が出る商材ではないから在庫を抱えるのも、鉄など異素材の外注を使うのもNG。
塗装でコーティングというのもKOMAでやる仕事ではない。


こうなるとKOMAでつくる傘立ては成立しない。

あらゆる面でリスクが高くウチにはそもそも向かない商材だ。


それぞれみんな面白かったが予想どおり直球の木製傘立てを提案して来た。
これで出揃ったみんなのアイデアは全部NGだ。


さあここからが本番。

おおトリで俺のプレゼン。

少し話が脱線するが、
材質の特性だったり予算だったりと理由は様々だが、今回のようにデザインが成立しないという事は珍しくない。

そんな時は、例えば「椅子」のデザインではなく「座る道具」のデザインとして考えると幅が広がり、固執しないで発想が自由になる事がある。


今回の傘立てはウチが木で作るにはリスクが多いが「傘を置く道具」だったら可能性はいくらでもある。


だから「傘立てそのものは作らない」

壁に外壁用の両面テープで木の突起を付けてそこに笠の柄をひっかけるだけ。

組手も接ぎも無いから壊れない。
物が小さいから狂いやワレのリスクが少ない。
安価で数年してダメになったら付け替えればいい。
お客さんが欲しい寸法や形にオーダーで応えれば良いから在庫リスクも無い。

あらゆる面のリスクが回避できる。

なんとなくこんなイメージだ。
(詳しくは実際にKOMAshopに取り付けてからお伝えします。)



何れにしてもジャッジはKOMAshop店長の久美さんだ。

だけどもう答えは見えている。

売る人にとって劣化などの品質に対するリスクは絶対に避けたい。
主力商品でない物の在庫リスクも避けたい。

「え〜それだけ〜?一生懸命考えたのに〜!」と肩透かしを食らったような若い衆。

「んなもん何回転も考えてのコレなんだよ!笑」


これは単純に経験値の差というやつだ。



1万時間の法則なんていうのを聞いた事がある。
才能を開花させるのに最低限必要な時間だ。
毎日8〜10時間で約3年。

最低限これをクリアしなければどんな才能も開花しないという事らしい。

たった3年で?
そりゃよっぽど才能のある人に限ってだと思う。

俺の場合もう18年になる。
結構みっちり6万時間やってきたつもりだが、その分だけは出来るようになっただけで今のところ才能が開花した様子はない。

修行を始めた頃「お前は才能がないから他の仕事をした方が良い」と親方衆からよく言われたが、なるほど納得でその通りなのだろう。

だけど続ける根性さえあれば好きなことやってメシが食えるようになる。
この18年で知ったことだ。


ただ「良い家具が作れるようになりたい」と最初からずっと変わらず今でも同じように思っている。




優勝賞金の1万円は
「松岡さん会社の経費つかい過ぎ!」
武内マイちゃんの一言で、俺の財布に入る前に没収されてしまった。


来月のKOMA-1GPのお題は「ゴミ箱」らしい。

また本気で勝ちにいこうと思う。





写真は、KOMA-1GPと同時に行った佐藤21歳の誕生会。

毎回みんなそれぞれ誕生会のプレゼントはかなり気合いを入れる。
今回は上着、バッグ、ヘルメット、インテリア小物、オイルライターなど。
写真にもあるようにかなり豪華だ。

だから「何にするの?もう決めた?」なんて本人にバレないように相談しながらけっこう悩む。

貰う方はもちろん選ぶ方も楽しいイベントだから今後も程良く続けていきたいと思っている。

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