Diary

NYのギャラリー

ニューヨークのすごく素敵なアートギャラリーからKOMAの作品を扱いたいというオファーをもらって2026年3月の本格的なスタートを目指して仕込みをはじめている。

新しい環境にチャレンジするときはいつだってそうだが、はたして自分のデザインや技術が通用するのか、期待に応えることができるのだろうかと不安になる。

しかし、この不安ていうやつが成長にとって一番の糧だということも知っている。

思えばKOMAの製品展開をスタートしたのは、2011年の東日本大震災の直後に開催した新宿伊勢丹での「KOMA家具展」からだった。
下請けではなく自分たちのクリエイションで勝負がしたいと、仕事終わりの深夜を使って3年間作りだめた家具の数々を展示した。
震災の影響で人もまばらで薄暗い店内の中、KOMAの家具が受け入れてもらえるのか不安で仕方なかったが、売り場に立った亀井の頑張りもあり上々の結果を得て、はじめて少し認めてもらえたような気がして嬉しくてたまらなかったことを覚えている。

2013年に直営店を出した時は不安というよりは、もうダメで元々一度でいいからチャレンジしてみたくて出店したのだった。
今でもうまくいかない事はたくさんあるが店を切り盛りしてくれた妻の努力も大きく、少しづつ認知されて店は成長していった。
お客さんが買ってくれる一つ一つに対して、受け入れてもらえた事への驚きに似た感動は今も変わらずに持っている。

2021年から世界のデザイン賞に挑戦し始めた時もそうだ。
まだ歴史という強みのないKOMAにとってブランドとしての強みを得たい一心だったが、まさかこんなに多くの賞をいただけるとは想像もしていなかった。

自分自身がほめられたり祝われたりすることが似合わない人間であると理解しているし、一つ一つの結果が当たり前だとも思っていないが、今はこの25年間で積み上げてきたある種の自信を持っていることも事実で、少々のことでは不安を感じなくなってしまっている。

だから今回のNYギャラリーのような不安を感じる新たな挑戦を与えてもらえるのはすごくありがたい。

家具職人になって25年間ずっと変わらずに思い続けていることは「もっと良い家具が作りたい」というたった一つだ。
その一つの原点のためだけに行動している。

作り手としての自分を高めていくことはもちろんだが、売上げや利益率を毎年伸ばす仕組みづくりも、人材を育てることも、KOMAを知って認めてもらうための環境づくりも、何もかも「もっと良い家具が作りたい」からやっている。

やっとの思いで一つ成長すると新しい課題が一つ見つかる。
ようやく上手くいったと思ったら予期せぬ落とし穴に足をとられる。

その度に「まだまだだなあ」と舌打ちしながら進むのだ。

そうやって一緒にやってきた仲間たちと酒を交わしている時なんかに、白濁としていく頭のどこかで何となく「ちゃんと良い家具が作れている」なんて、ふと思える瞬間に出会えるのだ。

Written by Shigeki Matsuoka

LES ATELIERS COURBET